1万円以下で買える海外ブランドの最適解。ウォーターマン『エキスパートエッセンシャルGT』レビュー
海外ブランドの万年筆は、万年筆ユーザーにとっては憧れだ。
いくら国産メーカーの万年筆が良品ばかりとは言っても、海外ブランドには国産メーカーには無い魅力がつまっている。
今回はそんな海外ブランドの中から、個人的にエントリーモデルとしてイチオシしたい万年筆「ウォータマン:エキスパートエッセンシャルGT」を紹介する。
かれこれ2年近く使っているが、国産メーカーと海外ブランドの良いとこ取りをしたような印象を受ける価格破壊の万年筆だ。
- 海外ブランドの万年筆って高いだけじゃないの?
- 実際の書き心地ってどんな感じ?
- 見た目は派手じゃない海外ブランドの万年筆が欲しい
そんな人の参考になるだろう。
ウォーターマン:『エキスパートエッセンシャルGT』は海外ブランド入門用の万年筆
ウォーターマンといえば、万年筆好きで知らぬ人はいないメーカーだ。
今からおおよそ130年前に初めて万年筆を作った男「ルイス・エドソン・ウォーターマン」がアメリカで立ち上げたブランドで、現在はパリをブランドの根源として運営している。
あっさりとアメリカを切り離すあたり、ブランドの力を良くわかっていると言わざるを得ない。
わかる。パリの方がブランド力あるもんね。
ちなみにウォーターマンはアメリカの企業サンフォード社の傘下で、同グループにはあのパーカーもいる。
アメリカから離れたいのにアメリカ企業の傘下なのだから、ままならいものである。
なお、ウォーターマンの代表格といえば「カレン」だが、ポルノグラフィティの新藤晴一さんが愛用していることで有名だ。
エキスパートエッセンシャルGTは、そんなブランドの入門編ともいえる価格帯の万年筆となっている。
しかし、海外ブランドの定めというべきか、金額が高いのが欠点だ。
ウォーターマン:『エキスパートエッセンシャルGT』レビュー
さっそくエキスパートエッセンシャルGTをレビューしていく。
高いと言っておいてなんだが、個人的に価格と釣り合っている商品だと思っているので、そこは安心してくれ。
では、さっそく見ていこう。
ペン先は鉄ペンだがオシャレ
エキスパートエッセンシャルGTのペン先は、鉄ペンだ。
価格帯の割に鉄ペンなのか……と思うかもしれないが、仕事でガシガシ使うなら、ある程度力が入っても大丈夫な鉄ペンの方が安心感がある。
実際書いていると、ボールペンのペン先のような安定感があるため、非常に書きやすい。
またペン先のデザインも金と銀が混ざっているため、筆記時に「ああ、今海外ブランドを使っている」という謎の優越感に浸れることもできる。
金色の部分は23金のゴールドプレートをつけただけでペン先の柔らかさには全く影響していないのだが、それはそれ。
金と銀のペン先は、充分に所有欲を満たしてくれる。
字幅が表示通りの太さ
個人的に一番嬉しいポイント。
海外ブランドの万年筆は、表示されている字幅表記より太い場合が多い。
F字とあったらM字幅になるし、M字幅とあったらB字幅になる。
とにかく一段階ほど太くなる。
これはもう仕方のないことで、アルファベットと漢字圏では文字が違うのだから当然だ。
漢字圏からすると、字幅が細いほど書きやすい。
その意味で日本で一番人気なのがF字幅というのは非常に納得できるわけだが、海外ブランドの場合はくせ者だった。
何せ国産メーカーと同じ感覚で買うと、「あれっ、太い!」となったからだ。
しかしエキスパートエッセンシャルGTは違う。
F字幅がちゃんと国産メーカーのF字幅になっている。
もう革命だ。海外ブランドは全てこうして欲しいと切に思った。
国産メーカーと同じ感覚で字幅を選べるのは、購入時に非常にありがたい要素だ。
F字幅が欲しい人は気にせずF字幅をポチればOK!
書き心地はPILOTのコクーンに近い
エキスパートエッセンシャルGTのペン先が鉄ペンというのは先述した通りだが、書き心地もまた鉄ペンと同じだ。
2年ほど使っての印象としては、PILOTのコクーンに非常に近い。
ライティブより柔らかくないのだが、鉄ペンらしい硬さながらもスラスラと滑るように書けるため、非常に気持ちが良い。
真に驚くべきはあの低価格帯で実現しているPILOTの方ではあるのだが……。
ともあれ紙に引っかかるような感覚もないため、筆圧の弱い人でも安心して使える。
ボディは安心の仏壇カラー
海外ブランドの万年筆はデザインセンスがとても良い。
ペリカンはその代表格だろう。
所有欲を満たしてくれるのは間違いないが、職場で使うと「こいつ自慢してるんじゃないか?」と思われたりしないか心配にもなる。
その点、黒と金の仏壇カラーなら安心だ。
良い意味でも悪い意味でも目立たないため、誰の気分を害することなく使える。
周囲の目を気にする人でも安心して筆箱から取り出せるのは嬉しいポイントだ。
キャップは嵌合式
エキスパートエッセンシャルGTのキャップは嵌合式だ。
嵌合式とは、ボールペンのキャップのように簡単に取り外せるキャップを指す。
反対に万年筆で多く取り入れられている回すタイプのキャップは「ネジ式」と呼ばれる。
一般的にネジ式の方が空気が入りにくいためインクの乾燥を遅らせる効果が期待できる。
万年筆でネジ式が採用されているのはそういった理由からだ。
しかし万年筆は筆記用具。書いてなんぼだ。
そのためインクが乾きやすいと言われようと嵌合式の書きやすさが一番バランスが取れている。
嵌合式以上にすぐ書けるものを目指すと、もうキャップレスやキュリダスといったノック式の世界になる。
ささっと取り出して書くという意味では、エキスパートエッセンシャルGTが嵌合式を採用したのは正解だ。
すぐに書けるため、ストレスなく筆記に意識を向けられる。
カートリッジとコンバーターの両方が使える
エキスパートエッセンシャルGTはカートリッジとコンバーターの両方に対応している。
特にウォーターマンといえば、ミステリアスブルーが代名詞。
青のようなターコイズブルーのような不思議なインクカラーは、見ていて全く飽きない。
ファンが多いのも頷ける色だ。
そんなミステリアスブルーもカートリッジとコンバーターの両方で使える。
持ち運びを優先するならカートリッジでいいし、インク吸入を楽しみたいのであればコンバーターが良いだろう。
時と場所を選ばずにインクを楽しめるのも、エキスパートエッセンシャルGTの良い点だ。
キャップポストするとキャップがくるくる回る
エキスパートエッセンシャルGTは良い部分ばかりってわけじゃない。
個人的に気になったポイントが、キャップポストしてもキャップが固定されないことだ。
キャップポストをすることでバランスが取れる設計になっているのだが、絶望的なまでにキャップがくるくる回る。
エキスパートエッセンシャルGTはキャップポストをすると「カチッ」と小気味よい音が鳴る。
それはいい。ちゃんとハマったんだな、と思える。
しかしちゃんとハマったくせして横方向はガバガバだ。
書いていると手の動きに合わせてキャップが回り、クリップが手に当たったら止まる。
些細なことなのだが、地味にうっとうしい。
これが嫌で、キャップポストする際に思いっきり差し込んだりしたこともあったのだが、効果のあった試しがない。
もう常にくるくる回る。
国産メーカーの場合こんなことは起こらないため、おそらく遊びのような隙間が作られているのだと思う。
この点を飲み込めるか否かで、エキスパートエッセンシャルGTの評価は大きく変わるだろう。
僕は何とか飲み込んだ。
ウォーターマン:『エキスパートエッセンシャルGT』は海外ブランドの万年筆の入門にオススメ
ウォーターマンのエキスパートエッセンシャルGTは、海外ブランドの万年筆としては国産メーカーに近い製品となっている。
字幅も表記通りだし、鉄ペンのため急な筆記にも耐えてくれる。
キャップが嵌合式なのもあって、咄嗟にメモを取る際にも活躍してくれるだろう。
一方でキャップポストをするとキャップが横方向に固定されず、たまにくるくると回る。
その鬱陶しささえ気にしないのであれば、高いと感じる価格に見合ったクオリティと断言できる。
- 高いが金額に見合うだけの筆記体験ができる
- 鉄ペンとして最上位の書き心地
- 安心安定の仏壇カラーで全く目立たない
以上が、エキスパートエッセンシャルGTを2年間使っての僕の印象だ。
途中で何度か「もうしばらく使うのいいか」と思って片付けるのだが、すぐにまた使いたくなるくらい中毒性のある万年筆となっている。
国産メーカーに慣れ親しんでいる人にほど、海外ブランドの最初の1本としてオススメだ。