【セーラー万年筆編】ボトルとカートリッジ。万年筆のインクはこれを使え!
万年筆において、ボトルインクとカートリッジインクのどちらが良いかは、永遠の悩みだと思う。両方使っている身としても、どっちにも良い部分があるとしか答えられない。だが、一般的には以下が共通認識となっている。
- ボトルインクは風情があるけど、初期費用が高い。
- カートリッジインクは手間がかからないけど、一本一本が高い。
ぶっちゃけそれで間違ってない。結局、各々の使い勝手に合わせて選んでねというのが正解。それ以上でもそれ以下でもない。でもそれじゃ、選ぶ側としては困るんや!
ということで、今回はセーラー万年筆が好きで好きで仕方ない僕が、ボトルインクとカートリッジインクの両方を使ってどっちの方が良かったかを場面場面で解説していきたいと思う。
・仕事で万年筆を使いたいけど、ボトルインクって持っていっていいのかな?
・顔料インクってどうなん?
な人の解決になるだろう。なお、PILOTのインクは以下で解説している。ご参考までに。
セーラー万年筆のボトルインクとカートリッジインク
ボトルインク
ボトルインクは、その名の通り「ボトルに入っているインク」だ。つまり、万年筆にインクを補充するにはコンバーターが必要になる。ひとつのコンバーターをいろんな色で使い回すことは想定されていないから、畢竟、ひとつのインクにひとつのコンバーターがセットになる。たくさん万年筆を持っていて、かついろんな色を使いたい場合はコンバーターで溢れかえることになる。
ただ、水性インクに限ってはしっかり色を落とせるのなら使い回してもOKだ。顔料インクは必ずわけること。詰まる。注意点をまとめたのが以下。
インクの種類 | メリット | デメリット |
水性インク |
色が豊富 |
水と光に弱い |
顔料インク | 光と水に強い 長期保存に向いている 書類にも推奨 |
色が少ない コンバーターや万年筆本体を良く洗浄しないといけない |
ボトルインクの特性は、その圧倒的なコスパの良さだ。入っているインクの量が多いから、比例してインクの単価が安くなる。大量に発注した方が1つ1つの値段が安くなるのと同じ理屈。カートリッジインクと同じ分量で金額を計算すると、ボトルインクの方が安い。
概算になるが、カートリッジインクが大体0.6~0.8CCの容量なので、1CC辺りの単価となると、カートリッジインクはボトルインクより2.3倍ほど高くなる。
ただこれはインクだけの費用なので、これにコンバーター代を含めればあんまり変わらなくなる。注意点として、保管場所には注意した方が良い。暗所で暑くならない場所がオススメだ。
仕事では使いにくい
ボトルインクは、仕事だと手間がかかりすぎて使いにくい。実は一度、職場でボトルインクから補充していたことがある。最初は目を引くからみんなから声をかけられていたのだけど、やっている内に面倒くさくなった。なんで毎回インクを補充せにゃならんのだと思うようになったのだ。
インクが無くなりそうだなーと思う時に先んじて補充できるのは良いのだけど、それ以外のメリットが特に無かった。見た目が良いくらいしかない。インテリアにもなるのよ、ボトルインクって。
しかし実際に補充すると、その後にはペン先を拭かないといけないし、零れたら掃除をしなくちゃいけないしで不便さが際立った。かつて使っていた人間として忠告するが、職場でボトルインクは使わない方が良い。
カートリッジインク
カートリッジインクは、使いやすさが突き抜けている。インクが出なくなったら、新しいカートリッジインクに差し替えれば良い。ボールペンのリフィルを変えるのと同じ要領でできる。楽ちんだ。反面、カートリッジインクに入っているインク量は少ない。ウォーターマンなんか2種類の長さがあるのだけど、短い方は一瞬で無くなる。そのくせして高い。なめてる。
カートリッジインクが高いのは、カートリッジ部分があるからに他ならない。このプラスチック分の金額が上乗せされているのに加え、細々とした費用も入っての金額。便利なものが高いのは、いつの世も真理だ。
ちなみにセーラーのカートリッジインクでしか見たことがないのだが、顔料インクの場合はカートリッジ部分に「ナノインク」と表示されている。写真のカートリッジインクは「青墨」なのだが「極黒」でも同じ刻印があったので、ナノインク――顔料インク共通なのだろう。ありがたい。セーラー大好き。
また最近になって、セーラーは「四季織」のカートリッジインクも出してくれた。様々な色を楽しめる「四季織」がカートリッジインクから楽しめるのは、地味に嬉しい。小さいボトルインクでもちょっと多いなぁって人にはお勧めだ。
職場で使うならカートリッジ
ボトルインクでの補充が手間になった結果、職場では全てカートリッジインクで統一するようになった。理由は簡単で、手を汚さずインクの交換ができるから。たったそれだけと思うかも知れないが、それだけのメリットがめちゃくちゃでかい。
インクを優雅に万年筆へ補充するなんて行為は、時間に余裕があって落ち着ける空間でやればいい。職場を至福の空間にしてはいけない。しかしカートリッジインクは一本に入っているインクの量が少ないので、普段使いしていると結構なスピードでインクが無くなる。もし職場でカートリッジインクを使いたいのなら、スペアは必ず確認しておいた方が良い。
セーラー万年筆のインクでオススメは顔料インク
セーラーから発売している顔料インクは、めちゃくちゃ良い。何しろ、水性インクにあった弱点がほぼ改善されているからだ。
- 耐水性がある
- 耐光性がある
- 色がはっきり出る
ゲルインクがお前は、と思うほどの性能だ。原理は簡単で、プリンターとかに使用される顔料をナノサイズにしてインクの中に入れている。だから発色が良いし、水にも流れない。光に関しても水性インクより遙かに強い。
特に重要な書類に記入するなら、顔料インクが一番良いだろう。逆に水性インクはNG。水性インク=フリクションと思ってくれ。長期保存に向いていない。ちなみにセーラーの顔料インクでお勧め順は、「極黒」>「蒼墨」>「青墨」だ。青色じゃねぇか、と文句を言われない順番となると、誰に聞いてもこの順番になると思う。
しかし便利な反面、顔料インクは色のバリエーションがまだまだ少ない。インクをもっと楽しみたい人は、水性インクをお勧めする。
顔料インクを使う際の注意点
顔料インクを使う注意点として、以下は重要。
これは、顔料インクに含まれている極微小の粒子がペン先に詰まってしまう可能性があるから。万年筆は毎日使うのが1番のメンテナンスと言われるが、顔料インクも同じだ。使う時は意識した方が良い。長く使う道具であるからこそ、愛情を注いであげることが大切だ。
顔料インクを使う時は、書く物がなくてもペンを走らせるくらいはしよう。
セーラー万年筆を職場で使うならカートリッジインクがオススメ
5年ほど職場でセーラー万年筆を使ってきてベストと思えたのは、カートリッジインクだった。水性インクと顔料インクの違いから考えると、どうしても顔料インクに軍配が上がるのだ。
更に理由として僕の仕事柄、顔料インクの方が都合が良かった(長期保存文書に記載していた)というのもある。5年間は保存しなければならない書類が多かったから、顔料インクに頼る他なかった。そのため、別に長期保存するような書類なんかないよ? って人なら水性インクでも良い。環境によって使い分けることが大切。水性インクは色のグラデーションが美しいし、見ていてうっとりするのは水性インクの美点だろうから。
- 職場で使うならカートリッジインクがオススメ
- ボトルインクを使って珍しがられるのは1度だけ
- 顔料インクは毎日使って半年に1度は洗浄する
以上を意識してセーラー万年筆のインクを選べた良い。どちらもメリット・デメリットあるので、それを踏まえた上で使い分けることが大切だ。