セーラー万年筆『プロフィットレアロ』はボトルインク愛用者に最高の1本【レビュー】
万年筆といえばインク。インクといえば万年筆。
インクを瓶から吸入する楽しみは、何とも言いがたいものがある。
そんな吸入式の中でも万年筆ユーザーの憧れとなるのが、ボディに直接インクを吸入する「回転吸入式」だ。中でも有名なのは、みんな大好きペリカンの万年筆も回転吸入式。
回転吸入式って海外の万年筆だけでしょ? と思う人はちょっと待って欲しい。国産万年筆だってちゃんとあるんだ!
ということで、今回は国産万年筆の中でも珍しい回転吸入式の機構であるプロフィットレアロを紹介する。
- インクをたくさん吸入できる万年筆を使いたい
- 国産万年筆で回転吸入式のってあるの?
- 外からインク残量が見える回転吸入式の万年筆を探している
そんな疑問を持っている人の参考になるだろう。ちなみに僕はお気に入りすぎて2年以上毎日使っている。
セーラー『プロフィットレアロ』は回転吸入式が好きな人にオススメの万年筆
プロフィットレアロは国産万年筆の雄であるセーラー万年筆が製作している万年筆だ。
その名の通りプロフィットシリーズに名を連ねており、以下のようなラインアップとなっている。
- プロフィット カジュアル
- プロフィット ライト
- プロフィット スタンダード
- プロフィット レアロ
- プロフィット21
- プロフィット21 レフティ
- プロフィットスタンダード21
- キングプロフィット
- キングプロフィット21
めちゃくちゃ多いと思うが、これでも柄物は排除した。特殊なデザインも入れるともっとある。
プロフィットレアロはこの中で唯一の回転吸入式の万年筆だ。というか、セーラー万年筆の中で唯一と言っていい。
回転吸入式の万年筆は非常に少なく、国内だと以下の2種類しかない。
セーラー万年筆 | プロフィットレアロ |
---|---|
PILOT | カスタム ヘリテイジ92 |
もっと増やしてくれてもいいのにと思うのだが、需要が無いのだろう。
セーラー万年筆・PILOT共に書き味が明確に違うため、選ぶ基準は好みでいい。
カスタム ヘリテイジ92はボディが透明なので、入っているインクがクリアに見える点は魅力的だ。一方のプロフィットレアロは従来の万年筆らしいデザインにワンポイントでのぞき窓が入っているだけ。
ぶっちゃけそれが良いのだけど、インクをスケスケで見たい人にはあまり合わない可能性はある。
なので、万年筆らしい硬派なデザインの物が好きなら、プロフィットレアロを選ぶと良いだろう。
いずれにせよ海外モデルと比べても安いので、回転吸入式の万年筆を安く購入したいのならオススメの万年筆だ。
セーラー万年筆『プロフィットレアロ』レビュー
さっそくセーラ万年筆「プロフィットレアロ」をレビューしていく。
2年以上愛用している万年筆なので、酸いも甘いも味わい尽くしている。リアルな声を届けていくとしよう。
ボディに吸入できる回転吸入式
とにかくこれが素晴らしい。
従来、回転吸入式は国産ではほとんどなかった。
海外が主流だったので、回転吸入式の万年筆を使いたい場合は泣く泣く海外の万年筆を買うしかない状況である。
いやま、海外の万年筆もめちゃくちゃ良いのだが、国産の万年筆は日本語を書く上で最も使いやすいという最強のメリットがあったのだ。
回転吸入式の魅力はなんと言ってもそのインクの搭載量で、他のインクの容量と比べても以下のような違いがある。
構造 | インク容量 |
---|---|
カートリッジ | 0.8ml(推定) |
コンバーター | 0.5ml(推定) |
回転吸入式 | 1.0ml |
コンバーターの約2倍ほど入る計算になる。ちなみに推定となっているのは、セーラー万年筆が数値を公表していないので重量から計算したからだ。
計算式は簡単で、カートリッジの重量1.5gから空きカートリッジの0.7gを引いただけ。コンバーターはカートリッジの筒に「コンバーターより1.5倍の大容量」とあるので、単純に0.8mlを1.5で割った。
まぁ、大体近いだろう。
万年筆を使っいて不便なのがインクを交換する行為でもあるから、長く筆記できるのはそれだけでメリットだ。
カートリッジ・コンバーターは使えない
当たり前だが、プロフィットレアロは回転吸入式なのでカートリッジ・コンバーターは使えない。
他の万年筆の場合、ボディを取ってカートリッジやコンバーターをつける。
しかしプロフィットレアロは本体に直接インクを吸入するから、本体がバラせたらむしろ大問題。インクが零れて仕方ない。
というわけで、プロフィットレアロはインクを吸入するだけのストロングスタイルとなっている。どうしてもカートリッジを使いたい人は、この時点でプロフィットレアロを使うのは諦めてくれ。
大人しくプロフィットライトやプロフットスタンダードあたりを使おう。
ボディカラーは2種類
プロフィットレアロのボディカラーは2種類ある。
- ブラック
- マルン
この内、僕が持っているのはマルンの方。既にプロフィットスタンダードで黒を持っているから、間違えたくなくてマルンを選んだだけだ。
だがしかし実際使っていると、このマルン、なかなか色合いが良い。
大人らしい色合いはどこかダンディズムを感じさせてくれるし、何よりも持った時の所有欲が半端ない。
使っているだけで何故か自分が上質な人間になったかのような錯覚を味わわせてくれる。100%勘違いではあるけども。
一方の黒は通常の万年筆と同じなので、安定している印象を受ける。
どちらも魅力的なカラーなのは間違いないが、個人的にはマルンをイチオシしたい。
ペン先のサイズは3種類
万年筆を使う上で気になるのがペン先のサイズだ。
いかに優れた万年筆であろうと、ペン先の種類が少なくては実用面に直結する欠点にもありかねない。
その点、プロフィットレアロは安心だ。以下の種類を取りそろえている。
- 細字(F)
- 中字(M)
- 太字(B)※ブラックのみ
注意して欲しいのが、太字はブラックしか対応していない点だ。
日本人が主に使用する書きやすい字幅の細字と中字はブラック・マルンともに対応しているのだが、太字は選択肢がブラックしかない。
太字は万年筆好きの中でも特にインクが好きな人に好まれる字幅だが、もし太字を使いたい場合はブラックになることは覚えておこう。
初めて万年筆を買うという方は、以下の表を参考にしてくれればOK。
字幅 | ボールペンでの太さ | 主な用途 |
---|---|---|
細字(F) | 0.3mm~0.7mm | 手帳や日記(オールマイティに使える) |
中字(M) | 0.7mm~1.0mm | 日記やメモ書き |
太字(B) | 1.0mm以上 | 手紙や趣味(インクを楽しみたい場合) |
滲むタイプの紙質だとめちゃくちゃ字が太くなるので注意しよう。無印の昔のノートがアホみたいに滲んで酷い目に遭ったことがある。
最終的に自分がどの用途に万年筆を使いたいかで選べばOKだ。
筆記具において、とりあえず細字を選ぶのが失敗しない秘訣だ。
ボディからインク残量が見える
プロフィットレアロのボディには「のぞき窓」が設置されている。
これがまた地味にありがたくて、インク残量が何となくだがわかるのだ。
回転吸入式は大容量のインクを搭載できるのと引き換えに、中のインク残量がわからないという欠点を持っている。
ぶっちゃけ使っていたら「あ、そろそろ無くなるな」というのがインクの掠れ具合でわかるのだが、それでも目視できるできないは大きい。
プロフィットレアロはインク残量の不安を解消するためにワンポイントののぞき窓が設置されているため、本体を傾けることでインクがどれくらい入っているかを目視できる。
これがカスタムヘリテイジ92となると全身スケルトンのスケスケボディなので、全てが見えるからどっちを選ぶかはお好みだ。
ただし欠点として、プロフィットレアロの場合、のぞき窓が小さすぎてインク残量がほとんどわからないということは覚えておいて欲しい。内部についているインクの色で全然見えないのである。
書き味でインク残量を予想することになるだろう。
細字(F)でもインクの濃淡を楽しめる
僕が持っているのがプロフィットレアロの細字(F)だからというのもあるが、インクの濃淡をしっかり楽しめるのも魅力だ。
従来、インクの濃淡を楽しもうと思うのなら字幅は太ければ太いほど良い。インクが多く出ることで文字に濃淡ができやすいからだ。
しかしプロフィットレアロは細字(F)であるのにも関わらず、しっかりとインクの濃淡を演出してくれている。
今、万年筆を使ってるぅ! とテンションが上がるんだよね
インクの濃淡を出せるのは万年筆にしかできない芸当だ。
それも相まって、細字(F)であろうとも書いていて非常に楽しい。
この点で何が良いかというと、手紙や年賀状に一筆添えたい場合にめちゃくちゃ味が出るのだ。特に年賀状は、プロフィットレアロで書くに限る。
活き活きとした字を書きたい場合、細字(F)が選択肢として上がってくるのはプロフィットレアロならではの強みと言える。
21金の巨大なペン先
プロフィットレアロのペン先は21金だ。金を「K」と書き記すのが通例となっている。
21Kとはペン先に含まれている金の含有量のことを指し、以下のようになっている。ちなみに24Kが純度100%の金。
種類 | 合金比率 |
---|---|
14K | 585/1000(58.5%) |
18K | 750/1000(75%) |
21K | 917/1000(91.7%) |
プロフィットスタンダードのようなエントリーモデルは大体が14Kで、グレードアップをするごとに18Kと数字が増えていく。
海外のブランド万年筆の場合、国産よりも高いくせにステンレス製とかザラにあるので、この辺りは流石国産である。
この21Kなのだが、何といっても大きさが全く違う。
上の写真を見ればわかるように、他のペン先と比べても頭1つ抜けている。
初めて持った時は「あれ、なんか大きくない?」と正直驚いた
ペン先が大きいと字が書きにくいように思うかもしれないが、驚く事なかれ。書きやすさには全く影響しない。
むしろペン先が大きくなったことで先端部分に意識を向けられるようになり、字をハッキリと書けるようになったほどだ。
セーラー万年筆のインク全てに対応
通常のインクの場合、どうしても耐水性・耐光性に難があったため、顔料インクを使いたいと考えている人でも安心だ。
かくいう僕も顔料インクの蒼墨を入れて使っている。
気に入ったインクがボトルで出ているのなら、プロフィットレアロに入れて使ってみると良いだろう。
他社のインクも使えないこともないとは思うが、基本的に推奨されていないので自己責任で使ってくれ。
個人的にはオススメしない。
洗浄方法は簡単
プロフィットレアロは回転吸入式なんだから洗浄が手間なんじゃないのぉ?
しかしインクを変えたかったり長い期間使わなかったりする場合はもちろん出てくる。その場合は以下の方法でやればOKだ。
- ティッシュペーパーをなどを敷いておき、その上で尾栓を回してインクを全て押し出す。
- 水を入れたコップにペン先を浸し、水を吸い上げる。
- 吸い上げた水を押し出す。インクが出て綺麗。
- インクを全て出し切るまで2~3を繰り返したら、丁寧に水分を拭き取る
10分もあればできるだろう。
インクタンクに水滴が溜まることがあるものの、使用上に問題はないそうなので安心してくれ。
水に浸して良いのはペン先だけ
覚えておこう。
なお、より詳細に知りたい方はセーラー万年筆の「万年筆のお手入れ方法」で確認できる。
セーラー万年筆『プロフィットレアロ』は回転吸入式のハイクオリティな万年筆
セーラー万年筆のプロフィットレアロは国産万年筆の中でも珍しい回転吸入式を採用している万年筆だ。
国産だとプロフィットレアロ以外ではPILOTのカスタムヘリテイジ92しかない。
ボディに直接インクを吸入するためカートリッジ・コンバーターと比べて多くのインクを使えるのが大きな魅力となっている。
カラーは2種類と少ないものの落ちついた大人の色なので、所有欲を満たしてくれる1本となってくれるだろう。日本人にとって使いやすいペン先が用意されているのもあって、使いどころに困る場面はまずない。
ワンポイントのようにボディに設置された小さなのぞき窓からはインク残量が確認でき、セーラー万年筆のインクなら全て使えることもあってインク好きにもオススメできる万年筆だ。
1本あれば生涯に渡って使っていける万年筆なのは間違いない。
- 使いやすい国産の回転吸入式の万年筆
- 所有欲を満たしてくれる大人向けの万年筆
- セーラー万年筆のインクが全て使える
以上の点において評価できる万年筆だ。
僕自身、プロフィットレアロはとても気になっていて、使わない日がないくらいずっと使っている。
セーラー万年筆のインクが気になっている人は、セットでプロフィットレアロを買ってみるのも良いだろう。一度使うと病みつきになる回転吸入式の魅力に取り憑かれるはずだ。